4.レーダーの伝播異常
過去20年,レーダーで追跡された未確認物体の例が数多くあり,レーダー観測と同時に目視される例も多数ある.いくつかの例についてはすでに述べた.
レーダースコープ上に偽の反射が生じるメカニズムはたくさんあるので,常にそれについて十分な知識をもって,レーダー未確認目標に対処する必要がある.
“ダクティング”や“トラッピング”の物理的過程は十分わかっている.蜃気楼の場合と同様,レーダービームの許容仰角は,典型的な逆転,湿度勾配のとき,0〜数十分程度である.それよりも大きな角度でダクティングが生じる場合は,経験したことのない大気の温度,湿度勾配が必要となるだろう.
ビーム角度は,ビーム中心の仰角と区別する必要があるので,注意しなければならない.ビーム中心の仰角は,たとえば2度でもレーダーエネルギーの放射の一部はそれより低い角度になる.その放射がトラップされる可能性があり,中心の仰角が高くても“地上反射”を生じるのである.
これらのことはすべて,多くのレーダー伝播に関する物理学の文献に詳しく述べられている.
異常な反射は,トラッピングや地上反射以外に,昆虫や鳥,大気の屈折率異常でも生じる.それらは“エンジェル”と呼ばれる.それらは,経験のある操作員であれば航空機や他の大きな金属製物体からの強い反射と間違うことがないような弱い反射である.
また,近くのレーダーによる干渉,対流圏の弱い不連続からの前方散乱(アトラスなどの研究をみよ),地上目標からの二次反射のような他の特殊なレーダー効果を留意しておく必要がある.
UFO文献中の有名なレーダー捕捉例を分析すると,上述の伝播異常では,これらのUFO事例を説明できそうにない.いくつかの例はすでに述べた(ケース32,35,36,37,38,39).
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