米下院UFOシンポジウムマクドナルド博士(公聴会用論文)
UFOの目撃者がいつも一人なのはなぜですか? どうして多数の目撃者が存在しないのですか?
>6.ケース14.コロラド州トリニダード,1966年3月23日

6.ケース14.コロラド州トリニダード,1966年3月23日

 白昼,街の数か所で少なくとも十数人が目撃した事件が,1966年3月22日午後5時頃,コロラド州トリニダードで起きた.APROの会報を元に,私は最終的に10名ほどの目撃者にインタビューした(平均年齢約12歳の子供7名,大人5名).
 この目撃は,全米でトップニュースとなったミシガン州南部の“沼地ガス”UFO事件から,わずか数日後に起きていた.APROの報告が指摘しているように,いくつかの点でトリニダードの方が明らかに良質の事例であるが,この事例についてはトリニダートの外ではほとんど知られていない(APROのコメントに同感であるが,私もUFO目撃の報道には失望している.だが,UFO報道の欠陥は,この問題に関する情報がなかなか表に出てこない主要な原因ではない).
 懐疑主義者は目撃証言にばらつきがある点をよく指摘するが,この事例で私が目撃者10人へインタビューしたときもばらつきは見られた.
 紙面の許す限り,各人の証言を詳しく紹介したい.そうすれば,よく指摘されるばらつきがはっきりするだろうが,同時に先に述べたように,科学的好奇心から何かを観察したとき,その情報は細かな点では食い違いが見られても,核心部分では一致していることがはっきりするだろう.
 フランク・R.ホックは,最初息子に「変なものが飛んでいるからきて」と呼ばれたときは,気にもとめなかった.凧あげのシーズンだったし,夕食の支度で忙しかったから,その10歳の息子に,自転車に乗って遊んできなさいと言っただけだった.
 息子がしつこく言うので彼女は外に出て空を見上げた.2個の物体が,トリニダードの真南にあるフィッシャーズピークから西にゆっくりと移動していた.上部がカップを逆さにしたようなドーム型で底はほぼ平ら,縁──彼女の言葉をかりれば「ソンブレロのつば」──はなかった.息子のディーンは「最初にママを呼んだときには三つあったんだよ」と話したそうである(私がインタビューしたトリニダードの郵便配達員ルイス・ディパオロも3個目撃している).
 興味深いことに,ホック夫人が物体を見たとき,ひとつは彼女と山の尾根の間に,もうひとつは低い尾根のすぐ上にあった.山はホック家から1/2マイルほどのところにある.物体のスケッチを稜線の写真に描いたものによれば,その角直径は1度程度(100フィート程度の大きさ)であるが,これは彼女が推定した角度とは違っていた.彼女だけでなく,たいていの人は,角度の推定には慣れていない.
 それらの物体は,上下運動をしながら稜線上をゆっくりと西に進んだ,とホック夫人は述べている.ときどき物体は傾き,午後遅い時間帯の陽光を金属的に反射していた.
 ある少年は風を切るような音で物体に気がついた,と話しているが,他の目撃者は音を聞いていない.ディパオロは7×35の双眼鏡で観察したが,物体は金属製のようで,皿をひっくり返したような形をしていたと述べている.彼が物体に気づいたのは,外で遊んでいた近所の少年たちに教えられたからである.
 アメリア・ベリー夫人は,少し早い時刻にトリニダードの別の場所で物体を目撃している.物体はもっと東にあり,フィッシャーズピークのあたりで旋回していたが,正確な時刻は不明である.彼女が見たのは2個だけで,きらきら光っているように見え,形は楕円形の幅の狭い皿のようだったと述べている.
 J.R.デュラン夫人は,反対側(北)の町で12歳の息子と乗馬していたとき,物体に気づいた息子に教えられた.物体は2個あり,銀色で,底が平ら,上が半円形をしていた.彼女によれば,その物体は,浮遊しているように低速で上下運動しながらフィッシャーズピークの西の方に進んでいったという.彼女も他の目撃者と同様,あれは飛行機ではないと確信していた.
 誰ひとりとして翼や尾翼のようなものを描写していない.もしこれが特殊なヘリコプターだとしたら,目撃者までの距離は近かったのであるから,エンジン音を聞き逃すことはないだろう.

考察


「米下院UFOシンポジウム」収録のマクドナルド博士の論文



  ◆ 未確認飛行物体に関する公聴会用論文
    
    目的と背景
    UFOの問題の従来にない特質
    いくつかの代替仮説
    インタビューおよび扱ったUFO事例の種類
        1.とりあげた事例の情報源
        2.目撃証言の特徴
        3.目撃者の信頼性
        4.目撃者の観察の信憑性
        5.目撃者が前もってUFOの知識があった場合に生じる問題
        6.現在関心が持たれているUFO報告の種類    
          a.夜間の発光体(NICAPのスタッフが“DL(夜間怪光)”
            と呼んでいるもの).

          b.翼のない円盤および葉巻型物体の至近距離での目撃.
          c.夜間近距離で目撃される静止滞空する発光物体.
            規則的あるいは不規則に点滅する場合がある.

          d.レーダーで捕捉された物体.
            地上あるいは飛行中の航空機から同時に目撃される.

        7.よくある疑問    
        8.有用なUFOの資料
    なぜパイロットはUFOを目撃しないのですか?
        1.ケース1.アイダホ州ボイシ,1947年7月4日 考察
        2.ケース2.アラバマ州モントゴメリー,1948年7月24日 考察
        3.ケース3.アイオワ州スーシティ,1951年1月20日 考察
        4.ケース4.ミネソタ州ミネアポリス,1951年10月11日 考察
        5.ケース5.ペンシルバニア州ウィロー・グローブ,1966年5月21日 考察
        6.ケース6.ケベック州東部,1954年6月29日 考察
        7.ケース7.インディアナ州ゴーシェン,1950年4月21日 考察
        8.ケース8.バージニア州ニューポートニューズ,1952年7月14日 考察
    UFOの目撃者がいつも一人なのはなぜですか? 
    どうして多数の目撃者が存在しないのですか?

        1.ケース9.ニューメキシコ州ファーミントン,1950年3月17日 考察
        2.ケース10.ワシントン州ロングビュー,1949年7月3日 考察
        3.ケース11.ユタ州ソルトレイクシティ,1961年10月3日 考察
        4.ケース12.ワシントン州モーゼス湖ローソンAFB,1953年1月8日
          考察
        5.ケース13.サバンナ川AEC(原子力委員会)施設,1952年夏 考察
        6.ケース14.コロラド州トリニダード,1966年3月23日 考察
        7.ケース15.カリフォルニア州レッドランズ,1968年2月4日 考察
    UFOが都市部ではなく,辺鄙な場所での目撃ばかりなのはなぜですか?
        1.ケース16.ニューヨークシティ,1966年11月22日 考察
        2.ケース17.カリフォルニア州ハリウッド,1960年2月5,6日 考察
        3.ケース18,テキサス州ベイタウン,1966年7月18日 考察
        4.ケース19.オレゴン州ポートランド,1947年7月4日 考察
    なぜ天文学者がUFOを目撃しないのですか?    
        1.ケース20.ラスクルーセス,1949年8月20日 考察
        2.ケース21.ニューメキシコ州フォート・サムナー,1947年7月10日 考察
        3.ケース22.メイン州ハーバーサイド,1947年7月8日 考察
        4.ケース23.ラトビア,オグラ,1965年7月26日 考察
        5.ケース24.コーカサス,キスロヴォーツク,1967年8月8日 考察
        6.ケース25.アリゾナ州フラッグスタッフ,1950年5月20日 考察
    気象学者や気象観測員は,空を見る機会が多いのに,
    なぜ彼らはUFOを目撃しないのですか?

        1.ケース26.バージニア州リッチモンド 1947年4月 考察
        2.ケース27.アリゾナ州ユマ,1953年2月4日 考察
        3.ケース28 南アフリカ,ケープ州アピントン 1954年12月7日 考察
        4.ケース29.ニューメキシコ州アレイ,1949年4月24日 考察
        5.ケース30.南極,アドミラルティ湾,1961年3月16日 考察
    気象観測用気球や調査用気球で
    たいていのUFOは説明できるのではないでしょうか?

        1.ケース31.ニュージャージー州フォートモンマス,1951年9月10日
          考察
        2.ケース32.ワシントン州オデッサ,1952年12月10日 考察
        3.ケース33.ワシントン州ロザリア,1953年2月6日 考察
        4.ケース34.マサチューセッツ州ボストン,1954年6月1日 考察
    なぜ,UFOはレーダーに捕捉されないのですか?
        1.ケース35.日本,福岡,1948年10月15日 考察
        2.ケース36.オーストラリア,ナウラ,1954年9月 考察
        3.ケース37.南アフリカ,ケープタウン,1953年5月23日 考察
        4.ケース38.ワシントンD.C.,1952年7月19日 考察
        5.ケース39.ミシガン州ポートヒューロン,1952年7月29日 考察
    UFOが本当に存在するのなら,
    なぜUFOの写真がたくさん撮影されていないのですか?

        1.一般的な考慮事項
        2.ケース40.カリフォルニア州コーニング,1967年7月4日 考察
        3.ケース41.エドワーズ空軍基地,1957年5月3日 考察
    もしUFOが実在するならば,
    何らかの物理的影響を残すはずではないですか?

    UFO現象に危険性や敵性を示す証拠はありますか?
        1.車を停止させたケース
        2.軽度の被爆
        3.深刻な外傷
        4.あからさまな敵意を示すまれな例
        5.UFOと上記以外の電磁波による障害
    UFO分析における大気物理学の誤用
        1.概説
        2.気象光学による説明
          蜃気楼幻日映日雲の反射/逆転
        3.大気電気
        4.レーダーの伝播異常
    まとめと提案
    参考文献


「米下院UFOシンポジウム」収録論文執筆者


ハイネックマクドナルドカール・セーガンホールハーダー
ベイカーウォーカーメンゼルスプリンクル
ヘンダーソンフリードマンシェパードソールズベリー


「米下院UFOシンポジウム」ダイジェスト「米下院UFOシンポジウム」のご注文



SSPCのUFO書籍・資料
「レーダー捕捉UFO事例の研究」 「未確認飛行物体に関する報告」 「コンドン報告第1巻」
「ブルーブックケースファイル」 「米下院UFOシンポジウム」 「コンドン報告第3巻」
「全米UFO論争史」 「ヨーロッパのUFO」


メルマガ「UFO研究WEBマガジン」
テーマはUFOの学術的研究.毎号,海外の優れた研究をご紹介.


販売書籍資料室書評リンク

UFO書籍のSSPC TOPへ