3.ケース33.ワシントン州ロザリア,1953年2月6日
もうひとつの興味深い公式の事例報告に,メンゼル(参考文献25,46ページ)とキーホー4)が引用しているものがある.彼らはこの事例ファイルをかなり早くから調べており,あまり詳しくない同様の情報を提供している.
午前1時13分,スポーケンに向っていたB-36はワシントン州ロザリア上空を飛行中だった.メンゼルによるとその時,「パイロット_____は,丸く白い光体を下方に目撃した.物体は南東のコースを進み推定速度150〜200ノットで旋回,上昇していた」.
メンゼルはB-36が「その光体に向かって急降下した.3〜5分,視野に捉えていた」と述べている.光体は点滅していた.キーホーによると点滅の間隔はおおよそ2秒だったという.
メンゼルは,“気象観測用気球”というこの事例の公式見解に同意している.物体は午前1時にフェアチャイルド空軍基地から放出された測風気球であり,「高度7,000〜10,000フィートの風が北西から吹いており,風速は約50ノットだった」と述べている.
さらに彼は次のように述べている.
「気球は風で南東に流される.つまり,気球は15分でフェアチャイルド空軍基地から12.5海里のロザリア上空にくることになる」
だが,ロザリアはフェアチャイルド空軍基地の南南東33(法定)マイル,すなわちメンゼルの言う距離の約2倍離れている.実際に気球が流れた距離は,7,000〜10,000フィート上空の風で簡単に推定できるわけではない.2月6日のその地域の高層風の調査によれば,その下の高度では南西から風が吹いていたという事実がある.気球の進路は最初は東北東で,それから東へ,最終的には南東に曲がって10,000フィート近くの高度まで上昇したのであろう.問題の時刻までには,気球はロザリア上空ではなく,すでにスポーケンの東にあったと思われる.
測風気球に使われている小さな夜間灯(ろうそくまたは電球)は数マイル以上離れていると肉眼ではほとんど見えない(3,000フィート先の1カンデラの光源は,ほぼ1等級の星の光度に相当する.また,6マイルの距離では6等星と同程度の明るさである.これは最良の条件下で人間の目に見える限界である.パイロットが若干の光源があるコックピット内部から,暗闇の中の1カンデラの光源を見つけるには,2,3マイル程度の距離でなければならない).B-36のパイロットからは,30マイル離れたスポーケンの東方にある気球の小さな明かりは見えないのである.
メンゼルは次のように述べている.
「その気球には点滅する白い夜間灯が搭載されていた.それにUFOの旋回上昇は気球には典型的なものである」
どちらの話も納得できないものである.測風気球のライトは点滅しない.ただし真上からであれば,気球が揺れたときにライトがときどき見え隠れして,点滅しているように見えるかもしれない.
しかし,B-36の飛行速度を考えれば,そのような状況はほんの数秒しか持続しない.しかしパイロットは3〜5分間も点滅する光体を目撃しているのである.“旋回上昇”についても“気球には典型的”なものではない.気球の軌道は周囲の風の動きに依存しているからである.それに,直線飛行しているパイロットから測風気球が“旋回している”ように見えるとしたら,非常に強い風が一定方向に吹いているときだけである.
以上のように,ロザリアの目撃例が気球であったという説には非常に多くの問題がある.よってメンゼルの「これらの根拠により,ATICの『UFOは観測気球であった』という結論は支持できる」という主張は受け入れられないのである.
考察
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