1.車を停止させたケース
1957年11月2日から3日にかけての深夜12時前後の2時間のうちに,9台の異なる車両すべてにイグニッションの故障が発生した.また,その中でヘッドライトが不調になったものも多い.これはテキサス州レヴェルランド付近の路上で,約100〜200フィートの赤または青味を帯びた光を放つ物体と遭遇したときに起きた10,13,14).この一連の事件は,全国のヘッドライン・ニュースで報じられたが,その後,球電と,イグニッションが濡れたのが原因であると公式に説明された.
しかし気象データを調べても,その夜レヴェルランド付近には雷雨はなかった.また,イグニッションを湿らせるような雨も降っていなかった.私はこの事件に遭遇したドライバーの居所をつかんでいないが,レヴェルランドの保安官ウィアー・クレムおよび当地の新聞記者にインタビューした.両名ともその夜に事件を調査した人物である.彼らは雨も雷もまったくなかったと断言している.この事件は上述の説明では納得できるものではない.
この種のUFO現象は決して少なくはない.フランスでは1954年にミシェル14)がオートバイや自動車等の点火不良を伴うケースを多数紹介している.オーストラリアのUFO事例を調べても同じような事例があった.おそらく数百の事例が記録されているであろう(参考文献10のリスト数十例を参照).
そのうち車両の電気系統が完全にやられた事例は非常にまれである.たとえばレヴェルランドの事例では,光る物体が去ると同時に,消えていた車のライトは勝手に直った(この事例ではライトのスイッチは入っていた).それに,エンジンもすぐに点火できるようになった.
これらのことから,“イグニッションが濡れたため”という説明が間違っているのは明かである.
どうしてこのような影響が生じるのかははっきりしていない.イグニッションの故障に関して,一つ考えられるのは,非常に強い磁場がコイルの鉄心を飽和させた,というものである.それにより,動作点が磁化曲線のカーブした部分まで押し上げられ,非常に小さな出力しか生み出せなくなる.このような影響が生じるには,わずか数エルステッドが直接鉄芯に発生すればよい.かなりラフな計算ではあるが,シールド効果と典型的な距離を考慮して逆算し,双極子磁場が距離の3乗に反比例すると仮定すると,“UFO双極子”の端から数フィート以内の場合に必要なHの値から,UFOの磁場はメガガウスのオーダーとなる.興味深いことに,同じ距離でのUFOの磁場を他の方法で逆算しても,結局同じオーダーになる.しかし,明らかに地球上のテクノロジーでは,このように強い磁場を容易に発生させることはできない.
私の知る限り,この仮説で予想される磁化について明確な証拠は得られていない.実際のメカニズムは,ここで述べたこととはまったく違ったものなのかもしれない.
なぜライトが消えるのかということに関してはさらにはっきりしない(車よっては,ライトの電気回路内部のリレーが磁気によって閉路しまうこともあり得るが).
このような事例では,危険性とか敵性といった恐ろしい問題はない.ライトやイグニションの故障がハイウェーでの事故を引き起こすのではないかという人もいるだろうが.
しかし,電気系統の故障ではない別のUFO事例の方が,ハイウェー事故の危険性が高いのは明らかだ.多くのドライバーが,UFOが頭上にきたときに,車をコントロールできなくなったと報告している.これは,車が停止するよりも危険である.実際,路上事故の危険がある“カー・バジング(車が振り回される現象)”と呼ばれる事例はかなり起きている.だが,こういう問題は公式には認められていないのである.
私が知っているオーストラリアの事故は,“振り回された”車に乗っていた人たちが,恐怖のあまり車を飛び出し,車は排水溝に突っ込んだというものだ.似たような事例はアメリカでも最近起きている.スペースの関係で他の事例については触れないが,多分数十例はすぐに集められるだろう.
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