米下院UFOシンポジウム 下院議員と科学者による“国策としてのUFO研究”討論
地球外の知的文明が我々を訪ねてくる可能性についてですが,そういう文明がどれだけ存在するか,ということに加えて,彼らがどんな移動手段をもっているかにもよるし,またどれくらいの頻度でその乗り物を飛ばしているかなど,いろいろな条件をできるだけ楽観的に想定してもですね,まず高度に発達した文明がここまで来る確率は非常に低いでしょう.
もし,科学の歴史から学ぶものが一つあるとすれば,それは,核エネルギー,レーザー,固体物理学,第二種の超伝導体等に匹敵しうる,まったく新しい,予測できない発見がある,ということでしょう. 我々よりはるかに進んだ文明がどこかにある,ということはだいたい受け入れられています.今後百年で我々の技術がどこまで進むかを考えることはできます.しかし,今後千年間に実現する技術を予測することはできそうもありません.つまり,我々より千年,百万年,十億年進んだ文明のテクノロジーというのは,我々には見当もつかないのです.
UFOが進んだテクノロジーをもった地球外起源の,調査目的の機械装置であるという可能性は,真面目に検討しなければなりません.この仮説は,ハードな事実,物的証拠があって支持してるのではなく,数百の事例を調べ,現象を説明できるかどうか個々の仮説を検証し,対立仮説が排除されて残ったものです.これはあまり評価されていませんが,その可能性は十分に支持できますので,調査しなければならないと思っています.
もし,マクドナルド博士がUFOの高度なテクノロジーについての非常に説得力のある証拠を提示してくださったら,私としては「とてもそんな飛行はできるはずがない」とか「宇宙人が来ているはずがないだろう」などとは言いません. でもですね,私に「その仮説は確かにありそうですね」と言わせるには,その前にしっかりとした証拠を見せていただかないと.
今日,科学のために使用できる資金は,痛々しいほど乏しいので,優先度という問題を考えなければなりません. まあ,UFOの研究に比べればリスクが低く,ずっと有効だと考えられる方法は,近くの惑星で単純なものでもいいから生命の痕跡がないかを探す,そして電波天文学の知識を駆使して知的生命体とコミュニケーションをとる努力を続けるという研究です. どっちのやり方がより効率的かは考えるまでもないと思いますけれど. UFOの研究に大金を叩くよりは,生物学や,NASAのマリナーやボイジャーなどのプロジェクト,それに全米科学財団の電波天文学へのサポートを強化なさるべきだとアドバイスさせていただきましょう.
科学者として,私は信頼できる科学的データを基に行動し,結論を導き出さなくてはなりません.しかし,すでに述べた通り,UFOに関してはそのようなデータは極めて乏しいのが現状です.偏見があったせいで,データ収集方法を改良することなどまったく考えられてきませんでした. 私は科学者ではありますが,科学的な“直感”を信じています.この分野は非常に混乱した状態が続いていますが,世界中からUFOの報告が絶えず届き,なおかつ報告しても何も得るものがない高い地位の人々からもよく報告されていることから,私はUFO現象の中に,科学における鉱脈──しかも非常に価値のある鉱脈──が潜んでいると“直感”しています.
職業柄,天文学者からの証言は最も信頼でき得ると思われます.しかし今までに,プロの天文学者が,間違いなくUFOだと確認した事例はありません.
以前有名な天体研究所の人たちの前で話をしたとき,なぜ天文学者がUFOを目撃しないのか,所長から尋ねられました.その部屋にいた所員の中で,観測中に奇妙な物体を見たという天文学者が2名いましたが,私に話した目撃談を公にしないでほしいと頼まれました. このように,専門家が正体不明の物体を目撃しても,報告するのを非常にいやがるというのは,思った以上によくある話なのです. なぜ天文学者がUFOを目撃しないのかという本題に戻ると,これについては定量的な考察を行う必要があります.天文学者の人数は警察官の200分の1ほどしかおらず,空を見る機会も実際は警察官に比べれば天文学者はずっと少ないでしょう.そのように考慮すべき材料はありますが,それでも天文学者,アマチュア天文家の目撃報告が多数記録されているのです.
たとえば,1954年から58年にわたってニューメキシコ州で行われたハーバード大の流星調査プロジェクトで,視界60度のスーパーシュミットカメラによる徹底的な撮影調査が行われました.このプロジェクトでは,高度約50マイル(80km)で3,000平方マイル(7,700平方km)の面積を,延べ3,000時間かけて調査しました.肉眼でようやく確認できる程度のかなり暗い光度の天体までを,肉眼および写真撮影によって観測したのです.プロの天文学者によるこの観測が行われたのは,膨大な数の未確認飛行物体の報告が寄せられていた時期,場所です.流星の研究では高速で移動する物体が対象ですが,説明不能の物体は観測されませんでした.この他にも天文学者が関わった調査は多数存在しますが,UFOが観測されることはなかったので,天文学界ではUFOの調査に懐疑的な見解が広がっています.
流星観測用のプレイリーネットワークカメラが広範囲をカバーした光学システムの良い例ですが, ペイジが「スミソニアン宇宙物理観測所のK.E.マクロスキーは,(異常なデータを)十分に捉えることができない,と述べている」と指摘しています. しかし天体写真の中には,異常なデータが含まれているものもあるはずです.ペイジの文献から引用すると,「ノースウエスタン大学天文学部のW.T.パワーによれば,スミソニアンネットの写真の“いくつか”に,異常現象の痕跡が認められる」ということです. 私の知る限り,大気圏外の異常現象の存在を,十分に,そして継続的に監視できるシステムは一つしかありません.しかしこのシステムは一部機密扱いになっているので,公の場では詳しくお話しできません.ただ,この監視システムが運用されてから,異常な物体が何度も捕捉されているということは,ここでお話してもさし支えないでしょう.現時点では,この捕捉は,自然現象,装置のトラブル,地球製の人工物体で説明がついていません.
もし我々が,すでに恒星間飛行を実現している進んだ技術文明の監視下に置かれているとすると,アーサー・クラークが先週のタイム誌上でうまく表現しているように,我々は厄介な状況下におかれることになります. アーサー・クラークは,「非常に進んだテクノロジーは,魔法と区別できないだろう」と指摘しています.これはUFOの目撃にうまく当てはまります.我々は,現代科学の説明を受け付けない,非常に高度なテクノロジーを相手にしているのかもしれないのです. 他の星から地球に来る能力のある文明の価値観や動機などを予測できる,と考えるのは間違っています.これは,何度も何度も繰り返されてきた,人間中心主義的な誤りです.
仮にこの銀河系に百万ものテクノロジーの発達した文明があって,毎年1機の宇宙船を飛ばし(高度に発達した文明であっても,星間飛行は気軽に行えるものではないでしょうが),そのすべてが太陽系まで到達できる能力があるとしても,その頻度は平均10万年に1度程度になると思われます. UFOマニアは,懐疑論を人間中心主義だとして非難していますが,毎日のように宇宙人が宇宙船で地球を訪れていると考える方が,この小さな惑星をそれほどまでに重要なものと考えている点でさらに人間中心的なのです.もし銀河系に多数の知的文明が存在するのなら,星間飛行までして訪ねてくるほど地球が重要なはずがないのですから.
しかし,宇宙人が実際にいるとして,何百年にも渡り我々を困らせているとするならば,なぜ着陸してアメリカ大統領,全米科学アカデミーのメンバー,連邦議会議員の前に姿を現さないのでしょうか?
「訪問した宇宙船はある種の知性体が操縦しているはずなので,彼らは他の知性をもった存在つまり我々とコンタクトしようとすると考えるのは合理的ではないだろうか? なぜ,フライングソーサーは,正式な外交関係を確立するために,国連ビルの前に着陸しないのだろうか?」というような主張があります.この主張は,我々が彼らがやってきた動機を理解できると仮定しています.当然ながら,我々にはそんなことがわかるはずがありません.我々の社会的な行動を,他の知性体に当てはめてしまうと,もっとも真実からかけ離れた間違いを犯すことになりかねません.
大気物理学の分野には,球電や大気光学のような,研究すべき現象がまだたくさんあります.しかし,そういう現象の研究は,UFOにかこつけて行うのではなく,それ自体の研究を目的として行うべきです.
推薦される観測システムの概略は,異常な物体が現れたときに,2台のシネセオドライト型光学追跡装置と大口径の追跡レーダーを組み合わせたもので観測する,というものです.このとき,レーダー自動追跡および追跡データ分析プログラムを,人工衛星や,できれば一般的な流星,航空機を退けるように設計します.彗星や巨大な隕石の突入,ある近距離(おそらく500km以下に制限される)の球電,その他の不規則な,あるいは異常な物体は,検出するようにします. このシステムでは少なくとも正確な位置情報は得られます.そして,上記の異常性の高い現象が見られない場合でも,流星や気象学的なデータは得られることになります.
暖かい空気の層が冷たい二つの空気の層に挟まれ,レンズのように働き,惑星が,明滅,回転し,鮮やかな色をした円盤状の像に見えることがあります.パイロットは,近くに飛行物体があると考え,像を迎撃しようとするでしょう.この像を迎撃しようとあらゆる行動をとっても,回避されてしまいます.明るくなったり,光が弱まったりすると,距離が変わったように見えるのです.
メンゼル博士の言うように,観測者の水平方向すぐ上の星は瞬き,像のずれは激しいのは事実です.しかしこれは定量的に考える必要があります.星像の位置のずれが非常に大きかったとしても,数分にすぎません.したがって,それが原因でシリウスがシャンデルを行ったとパイロットが報告したのだと提起するのは,天文学を無視するか,パイロットが低能だと見なすことになります.
UFOマニアは,軍や旅客機のパイロットのような“熟練した観察者”は,流星,惑星,恒星,幻日,蜃気楼をUFOと誤認するようなことはない,などという話を信仰のように信じています.こういう考えはまったくナンセンスだし,空軍のファイルはそれがまったく事実ではないことを物語っています.空軍のファイルでは,パイロットのような“信頼できる目撃者”による,何千もの事例が解決済みとされています.彼らも誤認するのです.
蜃気楼以外にもそういう機動を行っているように見える現象があります.幻日や幻月と呼ばれる,太陽や月の特殊な反射現象も異常な機動のように見えます.この現象は,巻雲の中に見られるような,氷の結晶の層が必要です.巻雲の中を飛行しているパイロットが,金属的に見える太陽あるいは月の光の反射を目撃することがあります. パイロットが接近しようとすると,遠ざかるように見え,反転すれば,追いかけてくるように見えるでしょう.その物体は,回避,追跡行動をとっているように見えるのです.パイロットが結晶の層から出てしまうと,UFOは爆発的に加速して飛び去ったように思うでしょう.
幻日は,完全に解明されている気象光学的現象です.適当な氷の結晶の雲が存在し,氷の平面結晶上に水平方向から入射した太陽光線が屈折すると,太陽の左あるいは右約22度のところに,ぼやけた茶色がかった光点が発生します. 幻日であれば,観測者ははっきりした輪郭をもった物体のようなものではなく,太陽の左か右,おそらく地平線に非常に近いところに非常にぼんやりした光点を目撃したと話すでしょうから,すぐにわかります. ソルトレイクシティ近くで61年10月2日に起きた目撃は,メンゼル博士がもっともらしく幻日で説明しましたが,これは幻日についての既知の特徴をすべて無視するか,報告の主な特徴をすべて無視したものでした.
メンゼル博士のUFOに関する著作は明らかに,人々のUFOに対する態度にかなりの影響力をもっています.私は,彼の著作物は有害図書だと考えています. 科学の周辺領域に属する,論争の的となっているこの問題について,意見の違いが少なければ,私はここで激しい批判は行わなかったでしょう.しかし,メンゼル博士の気象光学によるUFOの説明の大部分が,完全に間違っているのです.それをここで明確にしておきます.
これまでもっとも大規模なレーダーUFOフラップは,1952年7月の暑くて乾燥していたときに発生しています.このときはUFOの編隊がワシントンナショナル空港のレーダーで捕捉されました.しかし,気象局のその後の調査で,UFOマニアには手厳しい批判となる私の“暖気理論”が正しいことが完全に確認されました.
1952年7月19日,CAAのレーダーおよびアンドリュース空軍基地のレーダーが,時速100マイルから800マイル以上まで,速度を変えて移動する正体不明の目標を捕捉しました.飛行中の定期便の多数のパイロットもそれらを目撃しました. レーダービームのダクティング,トラッピングが原因であるという公式説明を定量的に分析しましたが,まったく支持できないものでした.私はラジオゾンデの記録を調べ,レーダーの屈折率勾配を計算しましたが,ダクティングの勾配にはほど遠いものであることがわかりました. 3基の異なるレーダーが同時に同じ位置にエコーを捕捉している点は非常に重要です.そして,レーダーの伝播という点では,レーダーと可視領域の電磁波の伝播の角度は,トラッピングが起きるほど大きなものではありませんでした.それではこの事例を説明できないのです. この事例は,首都上空を識別不能の物体が飛行した事例であると確信しています.
私が強調したいのは,UFO問題を独自に調査してきた結果,この極めて興味深い謎に対して早急に科学的関心を高めなければならない,と確信したことです. 過去20年間,UFOの潜在的重要性について,科学者組織はかなり誤解していると思います.長い間続いた誤謬の歴史について言いたいことはありますが,ここでは説明しません.ただ,科学および宇宙航行学委員会に対し,これ以上遅れずに,この状況を変えるべく権限上許される限りの行動をとるよう強く勧めます. このシンポジウムは,私が望む方向への素晴らしい一歩だと言えます.この委員会には今後もさらに努力を重ねていただきたい.本委員会,および本問題に関心のある他の下院委員会が,さらに規模の大きい公聴会を開く必要があると考えています.
私は,非常に騒々しい一部のグループが,国の予算でさらにUFO研究すべきであると圧力をかけていることを知っています.アマチュアUFO組織の会長が,会員に対し,議会にUFO研究を行うよう要求する手紙を書くよう指示しています.会員は指示通り熱心に議会に特別研究に資金を出すよう働きかけています.そういう行動が,コロラド大学のプロジェクトを導いたのです. そして今,コロラドプロジェクトの報告が否定的なものとなりつつあるとき,同じ団体が再度,議会に同じ要求を行っています.しかしそんな研究は成功するはずがありません.時間と金をそういう労力に費やすのは,まったくの無駄です.議会はそういう提案に対しては断固反対すべきです.今の時代,何度もUFOの問題を取り上げるのは,魔術を何度も取り上げるのに等しいことです.
「米下院UFOシンポジウム」収録論文執筆者
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