3.ケース11.ユタ州ソルトレイクシティ,1961年10月3日 考察
目撃された物体の,我々の常識をはるかに超える特性について,再度検証してみよう.
空中での静止滞空および急な垂直上昇が可能で,数秒のうちに視界から消えるほど高速で移動が可能な無尾翼機というのは,地球上のどの航空機にも該当しない.
当初の説明では,ハリスが目撃したのは金星だとされた.10月初旬の正午,金星はユタの空にあったことがわかっている.しかし,その方角は南西で,円盤型物体が目撃された南東ではない.さらに,円盤が一時は遠くの山を背景にしていたというハリスの発言も,金星説と矛盾する.また,金星は最も明るいときでも日中は見えにくい,というのは天文学者には常識であるが,ハリスは飛行しながら,移動するこの円盤の姿を何度も確認している.
メンゼル博士25)はハリス他が目撃したのは幻日にすぎないと主張,以後それが正式な説明として受け入れられた.
幻日は,太陽と同じ,あるいはやや大きい仰角の位置に見られる現象であるが,当日正午のソルトレイクでは,太陽は南の地平線から約40度に位置していた.この場合,幻日であれば南東(太陽から左に22度)に発生することになる.しかし,ハリスは太陽の仰角とは大きく異なる水平位置に物体を目撃しており,また背後に遠くの山が見えたことも,この幻日説を否定するものである.
最後に,空には雲がなかったという目撃者の証言を検証する.ソルトレイクシティの気象局に確認したところ,記録によればその日は快晴で,視程は40マイルあったことがわかっている.幻日は氷晶雲がなければ発生しない.この日の朝の気象観測用気球の放出時刻は午前10時だったが,いずれにせよこの事件を気象観測用気球の誤認だと主張するには,観測の詳細部分をほとんどすべて無視しなければならなくなるだろう.
この事例は,我々の技術をはるかに超える“性能”をもった機械的な飛行物体の,何百とある目撃例の一つである,と私は考えている.
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