蜃気楼
メンゼルの蜃気楼説の第一の難点は,蜃気楼を見る観測者の視線の仰角には制限があることをまったく無視していることである.蜃気楼はアリゾナ砂漠ではごく一般的なものだが,蜃気楼が見える角度は,水平から2,30分程度以下であり,光学理論とよく一致している.極度に異常な大気温度条件下(たとえば高々度)では,1度より大きな仰角で蜃気楼が見えるかもしれないが,そのような状況は非常に希である,ということを理解しなければならない.
しかし,メンゼルの説明や公式筋の説明では,観測者の視線が水平から5度から10度,あるいはそれ以上離れているUFO目撃の場合でも,蜃気楼説を持ち出している.あまりにも非現実的である.
もし,UFOがほとんど水平方向ばかりで目撃されているのなら,それはまず異常屈折だと考えられるであろう.しかし,多くの事例が示すように,またまともなUFO研究者たちはみんな知っていることだが,それは正しくない.もっとも興味深いUFO事例のいくつかは,近距離,真上で目撃されており,蜃気楼説は明らかに問題外である.
1947年のレイニア山近くでのアーノルドの目撃は,公式筋やメンゼルの説明では,蜃気楼ということになっている.彼は機を500〜1,000フィート上昇させていたとき,問題の物体群(跳躍する9個の円盤)は,仰角を変え,方位角で約90度,彼の視野を横切って移動するのが目撃されているにもかかわらずである.
蜃気楼の光学に詳しい研究者であれば,このような観測事例を蜃気楼で説明できると言い張るのは,まったくバカげていると感じるだろう.
同様に,1948年のイースタン航空パイロットのチルスとホイッテッドの目撃は,以前メンゼルが“蜃気楼”で説明したが,この事例には,既知の蜃気楼とは相容れない実測的なデータがある.
ミナートが考察したように,非常に希でまだよく説明されていない大気中の屈折異常がいくつか存在する.しかし,優れたUFO観測には,その種の希な異常現象よりもはるかに多くの種類がある.これらの優れたUFO観測を,希な屈折異常で説明することはできないのである.
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