2.ケース17.カリフォルニア州ハリウッド,1960年2月5,6日 考察
1960年2月のハリウッドの事例について,現在までのところ私は目撃者にインタビューを行っていない.だが,LANSの調査態度は実直で信頼に値するものであることは私が保証する.彼らが行った非常に多くのインタビューは裏付けが取れており,また内容の整合性も高い.これらの情報は,極めて異常な飛行装置が問題の二晩,ハリウッド上空を機動飛行していたことを示している.
報告の際だった特徴のほとんどを証拠として採用しない,というのであれば話は別だが,明らかに気象学的,天文学的説明は該当しない.また既存の航空機には,報告に適合するようなものは存在しない.
最初に疑いがもたれるのは,いたずらの可能性である.しかし,上述の複雑な機動(完全に静止,風に逆らって移動,爆発して別の物体を放出,さらに2月6日にはかなり高高度まで上昇)を実現可能な物体を製作するとすれば,相当な資金および技術が必要だ.これは,いたずら好きな学生にできるレベルのものではない.問題の現象は,気球程度の単純な方法では到底不可能である.はるかに緻密な仮説を立てなければ,報告された事象をいたずらとして説明するのは無理だ.
気球であれば風に流されるはずである.現場上空における問題の二晩の風速風向データをLANSが確認した結果,報告にあるような動き方と,地表〜1,000フィート上空までの風速風向との間には,一致が見られなかった.
また,交互に静止滞空と移動を行っていることに加え,急に方向転換しても高度が変化しなかった点は,気球が風に流される場合の動きとは違っている.
要するに,この事例には,高度に制御された飛行装置が関わっていたと考えられるのだ.この物体は,(2月6日の事例の場合)地面に対してほぼ正確に一定の位置で静止滞空する能力があったのである(モウキンは注意深く観測し,赤い光体がラ・ブレア通りとサンセット大通りの真上に滞空しているときに,建物を利用して光体の位置を測定した.彼によれば,数分間にわたって光には何の動きも認められなかった).しかし気象局によると,高度1,000フィート(すなわち問題の滞空位置を三角測量で求めた高度)での風速は南西の風時速5マイルだったのである.
これが,心理戦のための金のかかる手の込んだ実験だったとすると,このような現象を再現できる装置製造に必要な財源を説明する必要がでてくる.この仮説は,すでに存在している兵器が,ディズニーランドの花火よりもはるかに心理的緊張をもたらしている100メガトン級水爆の時代には,まったく非合理的だと思われる.
実際のところ,同程度に異常な現象を伴うUFO目撃事例は多数記録されており,このハリウッドでの事件は空前の出来事というほどでもない.
タスマニアのホバートで,タスマニア州の水力発電会社に雇用されている電気技師とその同僚にインタビューしたが,白昼ダーウェント川沿いにあるリスドンで,川の上空周辺で不思議な現象が目撃されている.この事件もハリウッドの事例と同じように“異常な”性質のものだ.
あるテキサス農場主の妻はメキシコのフアレスで目撃した事件の話をしてくれたが,これも異常さの程度では引けを取らない.
これらのUFO現象で,我々が相手にしているものが何なのかまったくわからないが,ハリウッドの事例に関しては今のところこう思っている.都市部でものすごく不思議なUFO現象が起きたことだけは認めなければならない,と.
これらの衝撃的な出来事は,公式には調査されておらず35),地元紙がごくごく軽く扱ってきただけだ.上記のニューヨークシティでの事例では,ニューヨークの大新聞に詳細を知らせる電話があったが,この新聞社は興味を示さず,何も報道されなかった.
同様に1968年2月4日のレッドランズの事例でも,地元各紙は小さな記事で十分だと思ったようだ.このパターンが延々と繰り返されているせいで,新聞記者はUFOなんてたまに特集記事で扱う題材以上の何ものでもないと信じ込むようになった.
UFO研究者にも理由は定かではないが,1966年にミシガンで起きた事件のように,まれにある事例が1日か2日ほど全国紙のヘッドラインを飾ることがある.だが,その後はまたマスコミに忘れ去られてしまう.
科学的にはUFO問題は拒絶されているし,報道機関はまともに扱わず,この問題が公式に調査されることもないため,一般大衆はどれほどの頻度でどのようなUFO関連事件が発生しているのか,ほとんどその実態を知らずにいる.
繰り返しになるが,そこに意図的なものがあるとは考えていない.つまり,悪意があるとか国民を守るため等の理由で情報が一切伝わらないように周到に画策している,と思われるような根拠は何ひとつないと思っている.
UFO 問題の過去の歴史を追っていけば,複数の問題が絡み合って,緊急に是正が必要な現在の状態になってしまったことがよく理解できるだろう.
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