5.ケース39.ミシガン州ポートヒューロン,1952年7月29日 考察
この事例もやはりも公式には識別不能とされている.事例報告7)では,簡単に以下のように述べられている.
「レーダー観測に関しては一連の気象現象が偶然レーダーに影響を及ぼしたもの,目視に関してはカペラを誤認したもの,という可能性は極めて低い」
しかしメンゼルは,パイロットはカペラを誤認したのだと主張し,機上および地上レーダーによる捕捉に関しては,以下のように述べている.
「気象条件が引き起こした疑似エコーにすぎない」
どういう気象条件が重って,地上および高度21,000フィートにあるレーダーに対してどのような影響を及ぼしたのか,については述べられておらず,F-94が不明目標に接近した際に,GCIレーダーが捕捉していた不明目標が180度反転した理由も示していない.どのような伝播異常が生じれば,ブリップが20分間にわたり北へ向かって移動し(報告されたF-94の速度から判断すると,移動距離は100マイル程度だと思われる),その後をF-94の反射が追随するように見えるのかも示されていない.
このようなアドホックな説明では,どんな内容の目撃であっても説明がついてしまうだろう.
私は事件現場に近い観測所で,その時刻におけるラジオゾンデ観測記録を調べたが,メンゼルの説明を支持するような気象状態ではなかった.
私はベテランの軍のパイロットおよびレーダー操作員に聞いてみたが,対流圏の中層域で機上レーダーが大気の影響を受けて,“地上反射”を捕捉したような話は聞いたことがないと言う.
メンゼルは,この種の事例を何度か“疑似レーダー反射”という短い言葉で説明しているが,“地上反射”の可能性がないので,彼は他にどういうものを想定しているのかわからない.
航空機に似たレーダー反射を得るには個体の目標が必要である.屈折異常による“エンジェル”型の目標はレーダー断面積が非常に小さく,ベテランの操作員が航空機のエコーと見間違えることはまずない.
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