米下院UFOシンポジウムマクドナルド博士(公聴会用論文)>いくつかの代替仮説

いくつかの代替仮説

 UFO報告を説明しようとする前に,私は目撃報告を主に八つの仮説に照らして考察するようにしている.

1.いたずら,でっち上げ.
2.幻覚,集団ヒステリー,デマ.
3.既知現象(気象,天文,光学的現象や航空機)の誤認.
4.非公開の先進技術の所産(新型の航空機,人工衛星,特殊な兵器,照明弾,再突入によって生じる現象など).
5.物理的現象(まれな大気電気現象,異常な流星,自然あるいは人工的プラズマ)に関する知識不足.
6.心理的要因に関する知識不足.
7.監視を目的とした地球外起源の機械装置.
8.地球を救済するためにメッセージを届けに来た宇宙船や超自然的な存在.

 これらの仮説については,私はいろいろなところで詳しく述べている2)が,ここでは,その一部について説明するにとどめる.
 UFOをバカにする人たちよりもはるかに少ないであろうが,いたずらやでっち上げは必ずと言っていいほど見られる.APROやNICAPのように,いたずらやでっち上げを暴いた優れた研究を行っている団体もある.
 UFO目撃報告の裏をとるようなことをせず,安楽椅子に座って幻覚やヒステリー状態といった心理学的要因を持ち出して解決したことにしてしまう人もいる.私がこれまで個人的に調べてきた数多くの事例では,そのような説明はほとんどが十分検証に耐えられるものではなかった.
 目撃者自身がUFOだと思って提出した報告の多くは自然現象の誤認(仮説3)で説明できる.だが,以下で述べるように,UFO目撃報告すべてをそれで説明できる,というのは根拠に乏しく,きわめて受け入れがたいものである.
 ある種の機械装置らしき物体を近距離から目撃した,というような,説明がむずかしいUFO報告に対して,(我々の極秘の,あるいは地球外起源の)機械装置を偶然目撃したものであると主張する者はほとんどいない.明らかに,これは仮説4に基づいて検証する必要がある.
 もし,目撃されている物体が,球電のような細部がわからない発光体や,流星群のように高速で空を流れる光体のようなものばかりであれば,UFO目撃事件は,未知の天文学的,または気象学的現象であり,地球外知性体が操縦する飛行装置だと考える必要はないだろう.しかし,後で詳しく述べるが,事実はそうではない.
 次に仮説6についてである.多くの心理学者に話を伺ったが,この仮説を肯定する意見はほとんどなかった.仮説6を否定するつもりはないが,目撃者への取材を重ねるにつれて,私自身もその可能性は低いと考えるようになった.
 仮説8についてであるが,この仮説を支持する多数の出版物の中に,まじめに取り上げるに値するものはひとつもない.確かに,核実験や環境汚染問題で想像される悲惨な運命から,優れた精神性をもつ人を救済しようという優しい地球外生命体が存在し,彼らと交流するという疑似科学的で奇怪な書籍は,ペーパーバックのコーナーでは注目されている.ある程度UFO問題の中身に立ち入れば,そういったカルトや願望的な思考とUFO問題の核となる重要な問題がまったく関係ないことはわかるのだが,主にそういった本のせいで,比較的好奇心の強い科学者さえもUFOに関わろうとしないのである.確かにその種の本は問題ではあるが,実際の観測データに基づいてUFOを論じるのではなく,おかしなことを言っている連中の話を興味本位で取り上げた新聞記事等を持ち出して,UFOを否定するというやり方については,批判する必要がある.
 これまで数多くの著名な科学者が,同じ結論に簡単に飛びついている.「UFOを見るのは変わり者だけである」と.
 仮説7,UFOは地球外知性体の飛行装置の一種である可能性が高く,その起源および目的は今のところ不明であるという仮説は,UFO研究者の多くが強く支持している.この仮説が,公的調査機関内部で初めて真剣に考察されたのは,1948年(1947年6月24日に米国ワシントン州レイニア山の上空でUFOが目撃され,この問題が米国中に知られるようになった翌年)だと思われる.
 しかし,仮説7を多数の証拠に基づいて,初めて公の場に持ち込んだのは,キーホー3)であり,1950年頃のことである.彼の以後の著作(1950年の本よりもはるかに多くの証拠に基づいている)ではさらにUFOが地球外起源であることを支持する論拠を提示している.私は1966年からUFO問題を集中的に調査しはじめたのだが,それ以前は,大げさなタイトルで生々しいキーホーの著作4)の事例が,信頼できる証言者から寄せられた本当に起きた事例なのかどうか,非常に疑わしいと考えていた.
 重要な事件が多い1951〜53年に公的な調査を行った技術将校ルッペルトが1956年に出版した著作5)についても,私は同じように考えていた.ルッペルトはキーホーほどははっきりと地球外仮説支持を表明してはいなかったが,彼がその仮説に傾いていたことは間違いない.
 私は以前に膨大な量の機密の公式ファイルを詳しく調べたことがある.それで,ここ1か月,私はこの2人の著作をじっくり調べてみた.すると,彼らの情報は驚くほど信頼できるものであることがわかった.キーホーとルッペルトが述べている1947〜53年のUFO事例6,7)の多くが,科学的に重要なものだったのである.
 NICAPが発行した資料7)も情報源となる.まだまだ量的に少ないUFOの資料に,貴重な資料が加わったと考えている.
 だがキーホーや彼に続く多くの人たち(いまだに科学的な団体とは見なされていないが)の地球外仮説擁護は,科学者の組織には影響を及ぼさなかった.それは,注意深く調査しさえすれば,現在の科学で説明できる現象だとがわかる,と政府機関が保証し,マスコミがこの問題をいい加減に扱っているためである.
 このように,仮説7はこれまで科学者たちから軽くあしらわれてきた.事実を調査しようと努力している科学者の一人として発言するが,もし知らず知らずそんな誤った態度をとっているのであれば,非常に残念なことである.そのような過ちは最小限に留めなければならない.
 調査した証拠をもとに,代替仮説(上のリストにないものも含む)を考慮すると,現時点では仮説7がもっとも有力であると私は考えている.
 私の考えでは,UFOが地球外起源のものでないとすれば,とてつもなく奇怪な何か──地球外起源の機械装置よりも科学的にはるかに重大な何か──であることになると思う.


「米下院UFOシンポジウム」収録のマクドナルド博士の論文



  ◆ 未確認飛行物体に関する公聴会用論文
    
    目的と背景
    UFOの問題の従来にない特質
    いくつかの代替仮説
    インタビューおよび扱ったUFO事例の種類
        1.とりあげた事例の情報源
        2.目撃証言の特徴
        3.目撃者の信頼性
        4.目撃者の観察の信憑性
        5.目撃者が前もってUFOの知識があった場合に生じる問題
        6.現在関心が持たれているUFO報告の種類    
          a.夜間の発光体(NICAPのスタッフが“DL(夜間怪光)”
            と呼んでいるもの).

          b.翼のない円盤および葉巻型物体の至近距離での目撃.
          c.夜間近距離で目撃される静止滞空する発光物体.
            規則的あるいは不規則に点滅する場合がある.

          d.レーダーで捕捉された物体.
            地上あるいは飛行中の航空機から同時に目撃される.

        7.よくある疑問    
        8.有用なUFOの資料
    なぜパイロットはUFOを目撃しないのですか?
        1.ケース1.アイダホ州ボイシ,1947年7月4日 考察
        2.ケース2.アラバマ州モントゴメリー,1948年7月24日 考察
        3.ケース3.アイオワ州スーシティ,1951年1月20日 考察
        4.ケース4.ミネソタ州ミネアポリス,1951年10月11日 考察
        5.ケース5.ペンシルバニア州ウィロー・グローブ,1966年5月21日 考察
        6.ケース6.ケベック州東部,1954年6月29日 考察
        7.ケース7.インディアナ州ゴーシェン,1950年4月21日 考察
        8.ケース8.バージニア州ニューポートニューズ,1952年7月14日 考察
    UFOの目撃者がいつも一人なのはなぜですか? 
    どうして多数の目撃者が存在しないのですか?

        1.ケース9.ニューメキシコ州ファーミントン,1950年3月17日 考察
        2.ケース10.ワシントン州ロングビュー,1949年7月3日 考察
        3.ケース11.ユタ州ソルトレイクシティ,1961年10月3日 考察
        4.ケース12.ワシントン州モーゼス湖ローソンAFB,1953年1月8日
          考察
        5.ケース13.サバンナ川AEC(原子力委員会)施設,1952年夏 考察
        6.ケース14.コロラド州トリニダード,1966年3月23日 考察
        7.ケース15.カリフォルニア州レッドランズ,1968年2月4日 考察
    UFOが都市部ではなく,辺鄙な場所での目撃ばかりなのはなぜですか?
        1.ケース16.ニューヨークシティ,1966年11月22日 考察
        2.ケース17.カリフォルニア州ハリウッド,1960年2月5,6日 考察
        3.ケース18,テキサス州ベイタウン,1966年7月18日 考察
        4.ケース19.オレゴン州ポートランド,1947年7月4日 考察
    なぜ天文学者がUFOを目撃しないのですか?    
        1.ケース20.ラスクルーセス,1949年8月20日 考察
        2.ケース21.ニューメキシコ州フォート・サムナー,1947年7月10日 考察
        3.ケース22.メイン州ハーバーサイド,1947年7月8日 考察
        4.ケース23.ラトビア,オグラ,1965年7月26日 考察
        5.ケース24.コーカサス,キスロヴォーツク,1967年8月8日 考察
        6.ケース25.アリゾナ州フラッグスタッフ,1950年5月20日 考察
    気象学者や気象観測員は,空を見る機会が多いのに,
    なぜ彼らはUFOを目撃しないのですか?

        1.ケース26.バージニア州リッチモンド 1947年4月 考察
        2.ケース27.アリゾナ州ユマ,1953年2月4日 考察
        3.ケース28 南アフリカ,ケープ州アピントン 1954年12月7日 考察
        4.ケース29.ニューメキシコ州アレイ,1949年4月24日 考察
        5.ケース30.南極,アドミラルティ湾,1961年3月16日 考察
    気象観測用気球や調査用気球で
    たいていのUFOは説明できるのではないでしょうか?

        1.ケース31.ニュージャージー州フォートモンマス,1951年9月10日
          考察
        2.ケース32.ワシントン州オデッサ,1952年12月10日 考察
        3.ケース33.ワシントン州ロザリア,1953年2月6日 考察
        4.ケース34.マサチューセッツ州ボストン,1954年6月1日 考察
    なぜ,UFOはレーダーに捕捉されないのですか?
        1.ケース35.日本,福岡,1948年10月15日 考察
        2.ケース36.オーストラリア,ナウラ,1954年9月 考察
        3.ケース37.南アフリカ,ケープタウン,1953年5月23日 考察
        4.ケース38.ワシントンD.C.,1952年7月19日 考察
        5.ケース39.ミシガン州ポートヒューロン,1952年7月29日 考察
    UFOが本当に存在するのなら,
    なぜUFOの写真がたくさん撮影されていないのですか?

        1.一般的な考慮事項
        2.ケース40.カリフォルニア州コーニング,1967年7月4日 考察
        3.ケース41.エドワーズ空軍基地,1957年5月3日 考察
    もしUFOが実在するならば,
    何らかの物理的影響を残すはずではないですか?

    UFO現象に危険性や敵性を示す証拠はありますか?
        1.車を停止させたケース
        2.軽度の被爆
        3.深刻な外傷
        4.あからさまな敵意を示すまれな例
        5.UFOと上記以外の電磁波による障害
    UFO分析における大気物理学の誤用
        1.概説
        2.気象光学による説明
          蜃気楼幻日映日雲の反射/逆転
        3.大気電気
        4.レーダーの伝播異常
    まとめと提案
    参考文献


「米下院UFOシンポジウム」収録論文執筆者


ハイネックマクドナルドカール・セーガンホールハーダー
ベイカーウォーカーメンゼルスプリンクル
ヘンダーソンフリードマンシェパードソールズベリー


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