4.ケース29.ニューメキシコ州アレイ,1949年4月24日 考察
公式ファイルでは,ムーアの目撃事例は識別不能とされている.メンゼルはそれについて次のように述べている24).
「2年以上機密ファイルに保存されていたこの事例は,気象光学を理解している人間には簡単に説明がつく.特定の条件下では,大気がレンズと似た役目を果たすことがある.ちょうど,太陽の光を一つの焦点に集めるレンズと同じように,大気のレンズも完全ではないが,像を結ぶことがある.ムーアが見たのは,上空にある気球の焦点がはずれた像か,乱視と同じ状態の像である」
メンゼルがこの事例を定量的に批判しているのは興味深い.
物体は実際の気球の位置から90度ぐらい離れた位置で発見され,5人の目撃者が,正体不明の物体の動きを,ある程度正確な角度座標が得られる装置を使って追跡し,物体が90度以上移動するのを観測した.
メンゼルは,物体を“大気のレンズ”で説明しているが,天文学者は大気のシンチレーションが観測に非常に深刻な影響を与えることを知っている.大気の乱れが原因で,星の像は平均の位置から不規則に何十秒もずれるからである.
メンゼルによると,1949年5月24日にムーアが目撃したものは,北東にある気球が大気のレンズによりほぼ一定の屈折率で屈折して見えた像ということになる.しかしそれは,像が大きく変位するひどいシーイングのときの屈折率の数千倍にもなるのである.地球大気の透過の性質が,メンゼルがUFO目撃を説明する際に決めつけるように異常なものであれば,メンゼルら天文学者たちは廃業しなければならないだろう.だから,ムーアの目撃例が識別不能として公式ファイルに記録されているのである.
付け加えると,数年にわたりホワイトサンズ実験場付近で何度もUFOが観測されている.追跡装置が使用された事例が多く,またほとんどが以前にも目撃している人が再度目撃しているのである.
それらの事例を見ると非常に印象的なものが多い.だが,公式機関のUFO問題への消極的な態度は,これらの事例の場合も例外ではない.
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