a.白井GCIレーダーによる初期の捕捉の試み
2335頃,羽田の北東に当たる湾近辺(白井のほぼ南南西)を捜索するよう,羽田から白井に要請があった.そのとき白井の管制官として任務についていたA中尉は,CPS-4の地上クラッタが多すぎ,羽田から指示された比較的低空の捜索には使用できないと判断した.羽田から指示された高度は,事例ファイルの1カ所で1,500〜2,000フィートと記されている.しかしA中尉は印象として,高度5,000フィートをあげている.明らかに,物体の大きさと距離が不明であることから,羽田では高度を正確に推定することができなかったと思われる.しかし,羽田が白井に与えた値は上の通りであった.
A中尉はCPS-1探索レーダーの高ビームと低ビームの両方を使って,3個から4個の像を検出した.場所は「管制塔から報告された通り,羽田から050°の方角であったが,明確な運動は確認できなかった」.報告書では,白井からの距離が明らかにされていないし,それらの像の推定高度も示されていない.ファイルで見るかぎり,ブルーブックが照会していない極めて重要な情報が相当数あるが,これもその一つである.目標間の間隔も示されていないので,羽田と白井での観察を“レーダーと目視”の一致した例と考えてよいのかどうか決めることは難しい.ブルーブックの要約では,同一物のように解釈している.「レーダーは,管制塔からの目撃結果に基づいて目標を捜し当てることができた.したがって,目視された対象と,レーダーが捕捉した対象とは同一物と考えてよいと思われる」
これに対して,コンドン報告は,肉眼による目撃に一致するようなレーダー観測はなかったという立場をとっている.この問題は基本的には解決不能であるが,私は,コンドン報告の立場が妥当であると思う.いずれにしても目視された目標は,3個ないし4個の目標と数の上で一致しない.ただ,主レーダー目標が,のちに3個の異なったレーダー目標に分かれて,2335の時点では3個ないし4個の正体不明の物体が空中に静止しており,そのうちの一つだけが発光していて,羽田から目撃されたと考えられないこともない.しかし,そのためにはいくつかの無理な仮定をしなければならず,あまり重要な仮説ではないと思われる.私の考えでは,レーダーによる捜索の開始時でさえも,目視された物体とレーダーに映った物体との間に明確な一致はなかった.そして,それ以後になると,一致の可能性はまったくなくなった.F-94の乗員も目視では目標を確認していない.このように,羽田の事例は他の重要な事例とは異なり,“レーダーと目視”が一致した例とは考え難い.しかし,目視とレーダーのどちらを取り上げてみても,それ自体は実に異常な出来事であり,その夜,羽田で説明不能の現象が目撃され,追跡されたという見方を支持するものと見なしうる.
レーダーで検出された物体が目視できなかったのはなぜだろうか.また,目視された発光物体が探索レーダーで捕捉できなかったのはなぜだろうか.この疑問に完全に答えることはできない.ただ,ブルーブックファイルはそのような事例が数多く記録されており,UFO現象をとり巻く科学的な問題点の一つとなっている.我々の知識の範囲内でも,光源は消すことができるし,ECM手段を用いれば,ある程度までレーダーを混乱させることができる.したがって,UFOの事例分析でそのような疑問にぶつかったときは,オープンマインドで接することが大切であろう.
マクドナルド博士のUFO研究――羽田空軍基地UFO事例
Case 3. Haneda Air Force Base, Japan, August 5-6, 1952.
in "SCIENCE IN DEFAULT:
22 YEARS OF INADEQUATE UFO INVESTIGATIONS"
James E. McDonald, Institute of Atmospheric Physics, University of Arizona, Tucson
(Material presented at the Symposium on UFOs, 134th Meeting, AAAS, Boston, Dec, 27, 1969)
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