羽田空軍基地UFO事例>1.序

1.序
 1952年8月5〜6日にかけて起きた,日本の羽田空軍基地での目視およびレーダー観測事例は,長く謎とされてきたものの一つである.これはプロジェクトブルーブックで識別不能事例に分類され,コンドン報告でも取り上げられて分析されている.コンドン報告では恒星カペラの回折現象と蜃気楼によるゆがみが重なって,肉眼にはそのように見えたのだろうと説明している.レーダー観測については異常伝播が原因だろうとしている.私はこの“説明”に非常に疑問を感じる.コンドン報告では,昔から知られているいくつかのUFO目撃事例について,あまりにも不用意と思われる説明をしているが,羽田空軍基地の事例はその典型と言えるものである.この事例の詳細を注意深く吟味し,コンドン報告の説明の根拠を確かめることは,この報告書が“古典的事例”を処理したやり方を知る上で特に意義あることである.
 羽田空軍基地(現東京国際空港)は,当時朝鮮戦争中のことでもあり,作戦行動中の基地であった.1952年のUFO目撃事件は,2名の管制官が北東の空に明るく輝く物体を発見したことから始まる.2名の管制官は,2330(以後,時間はすべて現地標準時で表わす)からの業務に就くところであった.2人の管制官と,事件に関係してくる他の将校のコード名を以下に示す.コンドン報告でも,私が所持しているブルーブック事例ファイルのコピーでも,実名は明らかにされていない(最近のコピーでは,UFO事例の目撃者の名前を伏せるという慣例に従って,名前が削られている).

コード名所属
A兵士最初に光を目撃した2人の羽田管制官の1人.階級はA/3c.
B兵士最初に光りを目撃した2番目の羽田管制官.A/1c.
A中尉8月5日2400まで任務についていた白井GCIの管制官.
B中尉8月6日0000以後任務についた白井の管制官.
P中尉スクランブルしたF-94のパイロット.
R中尉F-94のレーダー操作員.

 白井GCIには第528AC&W(航空・警戒管制)群が駐屯しており,10cmのCPS-1探索レーダーと,同じく10cmのCPS-4高度指示レーダーが置かれていた.白井は羽田の北東約20マイルの地点(35°49′N,140°2′E)にある.この事例にはあと二つの米空軍施設が関係してくる.羽田の西北西20マイルにある立川空軍基地と,羽田の北西30マイルにあるジョンソン空軍基地である.レーダーによる観測の主だったものは,東京湾の北端の上空で行われている.東京の中心部と千葉を結ぶ線のほぼ中央の上空である.
 この事例に関して,ブルーブック事例ファイルは25ページを費やしている.事件そのものがAFR200-2の公布以前に生じているので,時刻の報告やその他についての問題点は,1956年のレイクンヒース事件ほどややこしくない.それでも,やはり同種類の内部的な不一致が散見される.特に,特定の出来事に対して与えられている時刻がファイルの部分部分で異なっている.コンドン報告ではそのうち一つを取り上げて強調しているので,ここでもそれを取り上げて検討する.しかしそれ以外の時刻については,全体的な内部不一致を最も少なくする時刻を使用する.そのために重大な誤りが紛れ込むことはない.なぜならば時刻の差異はほとんどの場合1分か2分であり,上で述べた一つの場合を除き,どの時刻を使用しても事件の様相はそれほど変化しないからである.目視とレーダーによる観測の時間は,真夜中近く,ほぼ50分間にわたっている.最も注目すべき出来事は,ほぼ2330と0020の間に生じている.
 この事例では,目視とレーダーの両方による未確認物体の観測が記録されているが,注意深く吟味してみると,同じ物体が目視とレーダーで同時に観測されたとはいえないことがわかる.ただ一つの例外は,2330直後における最初のレーダー観測だけである.したがって,これは,一つの未確認物体を二つのチャンネルで同時に観測したという意味での“レーダー/目視”事例ではない.この点については5節でさらに詳しく触れる.



マクドナルド博士のUFO研究――羽田空軍基地UFO事例

Case 3. Haneda Air Force Base, Japan, August 5-6, 1952.
in "SCIENCE IN DEFAULT: 22 YEARS OF INADEQUATE UFO INVESTIGATIONS"
James E. McDonald, Institute of Atmospheric Physics, University of Arizona, Tucson
(Material presented at the Symposium on UFOs, 134th Meeting, AAAS, Boston, Dec, 27, 1969)



要約
1.序
2.目視観測
   a.最初の目撃
   b.立川空軍基地での目撃
   c.発光体の方向,強さ,形
   d.発光体の見かけの動きに関する報告
3.目視観測についてのブルーブックの説明
4.目視観測に対するコンドン報告の説明
5.レーダーによる観測
   a.白井GCIレーダーによる初期の捕捉の試み
   b.F-94のスクランブル発進
   c.GCIによる最初の飛行物体の捕捉
   d.2周目とF-94による迎撃の試み
6.レーダー観測に対するコンドン報告の説明


 


SSPCのUFO書籍・資料
「レーダー捕捉UFO事例の研究」 「未確認飛行物体に関する報告」 「コンドン報告第1巻」
「ブルーブックケースファイル」 「米下院UFOシンポジウム」 「コンドン報告第3巻」
「全米UFO論争史」 「ヨーロッパのUFO」


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