全米UFO論争史 >第4章 ロバートソン査問会

 1953年,公的なUFO政策は劇的に変化した.ブルーブックは1952年には調査能力が高まったが,1953年の終わりにはもはやUFO報告を十分調査,分析できる機関ではなくなり,主に広報とデータ収集を行う機関として機能しているだけだった.この変化は,主にロバートソン査問会を構成する科学者グループの勧告が原因である.CIAが後援したこの査問会の会議は,UFOの歴史において重要な事件となった.査問会開催の原動力に関する情報はCIAとペンタゴンにファイルされており,ほとんど入手できなかったが,空軍を政策転換に導いた多くの出来事を再構築するだけの情報は十分入手できた.
 CIAは1952年のウェーブのときにUFOに関心を持った.CIAと,バンデンバーグ将軍,サムフォード将軍を含む空軍の上級将校は膨大なUFO報告が国家安全保障にとって脅威となるかもしれないと考えていた.ソ連等の敵国が米国を攻撃するためにUFOをデコイとして使用することは十分考えられる.混乱の度を増してきた米国の大衆が,攻撃してきた敵爆撃機をUFOと誤認するかもしれない.少なくとも,敵国が,空軍の公式UFO声明を大衆が疑うよう仕向け,大衆が軍を信用しなくなるように,フライングソーサーへの熱狂を利用することはできるであろう.実際に,1952年に目撃報告が激増したとき,通常の軍の情報チャンネルに影響が出ており,敵がそういう攻撃を仕掛けてきた時の脆弱性を示していた.
 バッテル記念研究所の統計調査の情報で,UFOの危険性評価は可能だった.しかし思わぬトラブルがその計画の前に立ちふさがった.

(後略)



ロバートソン査問会メンバーと査問会出席者


査問会議長H.P.ロバートソン博士.米国防総省兵器システム評価グループ代表.CIA の機密の任務にも携わる.専門は宇宙論,相対性理論.


S.A.ハウトスミット博士.電子スピンの発見者.理論物理学創設に尽力.ブルックヘイブン国立研究所所属.


ルイス・アルバレズ博士.専門は高エネルギー物理学.マイクロ波レーダーシステム,原爆開発に貢献.1968年ノーベル物理学賞.


物理学者ソーントン・ページ博士.大戦時海軍兵器研究所所属,1953年当時ジョンズ・ホプキンズ大学オペレーションズ・リサーチ研究部副部長.


物理学者ロイド・バークナー博士.大戦時国防総省研究開発委員会事務局長,後に国務長官特別補佐官.査問会当時ブルックヘイブン国立研究所の責任者.


天文学者J.アレン・ハイネック博士.プロジェクトブルーブック天文学コンサルタント.専門は恒星分光学.後にハイネックUFO研究センター設立.


フレデリック・C.デュラント.陸軍兵器試験局責任者,米国ロケット協会前会長,国際宇宙飛行連盟委員長.査問会議事録要旨を執筆.


ブルーブック機関長エドワード・J.ルッペルト大尉


ブルーブック連絡将校デューイ・フォーネット少佐


ATIC局長W.M.ガーランド将軍


その後のUFO研究の流れに多大な影響を及ぼした、1953年開催のロバートソン査問会メンバー(上段の5名).下段左2名は準メンバー.査問会には他に,プロジェクトブルーブック機関長エドワード・ルッペルト大尉,ブルーブック連絡将校デューイ・フォーネット少佐,航空技術情報センター局長W.M.ガーランド将軍,海軍画像解析研究所のR.S.ニーシャム大尉,ハリー・ウー大尉,CIAのH.マーシャル・チャドウェル,ラルフ・L.クラーク,フィリップ・G.ストロングが出席した.


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原書表紙
   序文
   謝辞
   用語について

   第1章 謎の飛行船 ─― 論争の序曲
   第2章 現代のUFO目撃始まる
   第3章 1952年のUFO目撃ウェーブ
   第4章 ロバートソン査問会
   第5章 コンタクティとUFOマニア
   第6章 1954〜1958年 ―─ NICAPの台頭
   第7章 議会公聴会開催を巡る争い
   第8章 1965年 ─― 論争の転機
   第9章 コンドン委員会とその余波
   第10章 1973年 ── 過去からのこだま

   空軍が受けた年間UFO報告数の変化
   日本語版あとがき
     ・閲覧可能となった米政府文書
     ・目撃報告の減少
     ・ロズウェル事件
     ・ネオコンタクティ
     ・UFO研究界
     ・陰謀論
     ・アブダクション
     ・次の段階
   註
   情報源について
   主要参考文献
   著者経歴
   索引


   本書で取り上げた書籍一覧


 



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