全米UFO論争史 >第2章 現代のUFO目撃始まる

 未確認飛行物体の存在とその起源について,現代に入っての議論は,米空軍の調査に重点を置いている.空軍は1947年から報告を集めて評価する作業を始めた.十分な情報が得られ,UFOは特に異常なものではないと空軍は断定した.この結論に達する過程で空軍が用いた方法論が,この論争の焦点となった.しかしこの論争が始まった1947年以前に米国はすでに2度,未確認飛行物体の大規模な目撃に関わっていた.第二次世界大戦中と戦後のスウェーデンで,である.
 最初の目撃は,連合軍の爆撃機パイロットが日本やドイツ上空を飛行中に,光る謎の球型,円盤型の物体に追尾される,というものだった.米軍パイロットはそれをフーファイターと名づけた.これは人気のあった漫画,スモーキー・ストーバーに出てくる「フーあるところ,ファイアあり」というセリフをもじったものだ.フー(feu)とはフランス語でファイアの意である.
 そのフーファイターは爆撃機の翼端の辺りをダンスするように跳ねまわったり,機の前方や後方についたりした.海上にいた海軍の兵士も,この物体の機動を目撃している.
 最初,連合軍はその物体は静電気の電荷だと考えた.爆撃機の点火装置を妨害する,ドイツか日本の秘密兵器だという噂も流れた.後に多くの軍人は,フーファイターに敵意が見られないことから,その物体はパイロットを混乱させ,狼狽させるための心理兵器に違いないと考えた.
 皮肉なことに,戦後,米国の大衆はドイツや日本も全く同じ現象に遭遇し,連合軍の秘密兵器だと考えていたことを知ることになる.米第8陸軍はおざなりな調査で,フーファイターは「幻覚」と断定した.フーファイターには敵意が見られなかったため,誰もあまり関心を示さなかった.だが,その起源については謎のまま残った.
 二つ目の目撃ウェーブは,1946〜1948年に西ヨーロッパおよびスカンジナビア半島で起きた.多くの人々が謎の葉巻型の物体を目撃したと報告した.スウェーデンとフィンランドの目撃者はソ連国境付近で物体を目撃したため,米国の情報機関が関心を示した.この,いわゆるゴーストロケットは,ドイツの秘密実験場ペーネミュンデから設計図を入手し,ドイツ人科学者の協力を得て,ロシアが開発した秘密兵器ではないか,と情報機関は脅威を感じていた.

(後略)

有名なゴーストロケットの写真.1946年7月9日,スウェーデンで撮影.

米空母バリーフォージから放出されるスカイフック気球.その巨大さがわかる写真である.当初,この気球の存在自体が機密だったので,この気球がUFOに誤認されるケースが多数発生した.


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原書表紙
   序文
   謝辞
   用語について

   第1章 謎の飛行船 ─― 論争の序曲
   第2章 現代のUFO目撃始まる
   第3章 1952年のUFO目撃ウェーブ
   第4章 ロバートソン査問会
   第5章 コンタクティとUFOマニア
   第6章 1954〜1958年 ―─ NICAPの台頭
   第7章 議会公聴会開催を巡る争い
   第8章 1965年 ─― 論争の転機
   第9章 コンドン委員会とその余波
   第10章 1973年 ── 過去からのこだま

   空軍が受けた年間UFO報告数の変化
   日本語版あとがき
     ・閲覧可能となった米政府文書
     ・目撃報告の減少
     ・ロズウェル事件
     ・ネオコンタクティ
     ・UFO研究界
     ・陰謀論
     ・アブダクション
     ・次の段階
   註
   情報源について
   主要参考文献
   著者経歴
   索引


   本書で取り上げた書籍一覧


 



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