全米UFO論争史 >第1章 謎の飛行船 ── 論争の序曲

 1896年から1897年にかけて,アラバマ州,アーカンソー州,カリフォルニア州,コロラド州,イリノイ州,インディアナ州,アイオワ州,カンザス州,ケンタッキー州,ミシガン州,ミネソタ州,ミズーリ州,ネブラスカ州,オクラホマ州,サウスダコタ州,テネシー州,テキサス州,ウェストバージニア州,ウィスコンシン州の上空で何千人もの人々が飛行船を目撃した.この目撃は1896年11月,カリフォルニア州で始まり,1月から3月中旬の期間を除いて1897年5月まで続いた.その飛行船は操縦されているマシンのようで,形は円筒形あるいは葉巻型,エンジンでプロペラを駆動している ように見えた.
 目撃者が飛行船を見たというときは,グライダーや飛行機ではないことを意味している.またほとんどの人々が飛行船と,籠のついた丸い気球をはっきり区別していた.彼らが航法の問題を解決できると信じていたものは飛行機よりも飛行船であり,飛行機の重要性は1903年のライト兄弟の飛行まではあまり認識されていなかった.それで当時の「空を征服するマシン」のデザインの多くは,搭乗者の位置が底にある操縦型飛行船だった.
 物体の描写は多種多様なのだが,それは目撃者が正確に覚えていないか,異なる飛行船を目撃したためであろう.ネブラスカ州オマハでは飛行船の目撃でアクサーベン騎士団の入団儀式が中断した.興奮しきった目撃者によれば,その物体は「少なくとも直径18インチはあり,鋼鉄のような船体に光が反射し,長さは12〜13フィートはある」というものだった.1897年4月10日,シカゴトリビューン紙は,細長い物体で,長さ70フィート,幅約20フィートの船体の上に帆か翼のようなものがついたものを一般の人が目撃した,と報告している.イリノイ州マウントキャロルでは,目撃者はその飛行船を長さ8〜10フィート,高さ2〜3フィートと描写している.「輪郭がかすかに光っていて,卵のような形をしていた」とウィスコンシン州ウォーソーの目撃者は言う.テキサス州ダラスの飛行船は「輝く霞のような雲の中」で目撃され,「葉巻型の船体の両側に,広げた帆あるいは翼がついているようだった」.報告は続けて,「その両端には約45度の角度で帆から突き出した大きな回転するファンがあり,後方のそれが押し下がる間に,前方のそれは持ち上がり,やや鳥の体に似ていた」と描写している.目撃者はその長さを約200フィートと推定している.テキサス州フォートワースの飛行船は長さ60フィートの「旅客用バス」のようで,両端がとがっており,コウモリのような翼があったと描写されている.

(後略)

テキサス州フォートワースで目撃されたコウモリのような翼を持つ飛行船(ダラス・モーニングニュース1897年4月16日).

政治風刺漫画「明かされた飛行船の秘密」. ヒューストンポスト1897年4月25日版に掲載.この時期,このような飛行船をネタにした政治風刺の漫画,ポエムが新聞に多数登場した.


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原書表紙
   序文
   謝辞
   用語について

   第1章 謎の飛行船 ─― 論争の序曲
   第2章 現代のUFO目撃始まる
   第3章 1952年のUFO目撃ウェーブ
   第4章 ロバートソン査問会
   第5章 コンタクティとUFOマニア
   第6章 1954〜1958年 ―─ NICAPの台頭
   第7章 議会公聴会開催を巡る争い
   第8章 1965年 ─― 論争の転機
   第9章 コンドン委員会とその余波
   第10章 1973年 ── 過去からのこだま

   空軍が受けた年間UFO報告数の変化
   日本語版あとがき
     ・閲覧可能となった米政府文書
     ・目撃報告の減少
     ・ロズウェル事件
     ・ネオコンタクティ
     ・UFO研究界
     ・陰謀論
     ・アブダクション
     ・次の段階
   註
   情報源について
   主要参考文献
   著者経歴
   索引


   本書で取り上げた書籍一覧


 



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