既に『UFOI』No.4(2002年4月)が本書を,同じ出版元によるルッペルトの訳本とともに紹介していたが,あまりに高額なことと,インターネットによる連絡先しか記されていなかったことなどから,私はいずれも買っていなかった.しかし,今回『UFO information』の池田氏追悼号(12月)で,両書が「会員特別価格」により郵便でも申し込みできると知って早速送金したところ,いちばん安いインターネット価格で扱っていただいた次第.
レイクンヒース事件(1956年8月)とワシントン事件(1952年7月)に関して(この順番で分析),膨大な情報を収集整理し,懐疑派たちの主張をつぶさに論破していく本書は,たとえ定価のままだったとしても買うに値する.とりわけ,私が米国の研究家に依頼しても得られなかった,ワシントン事件に対するボーデンとビッカーズの説明(ピーブルズ氏の訳本で初めて知った.本誌No.43,44参照)が,『附録12』として12ページにわたり原論文から翻訳されていることに驚く.しかもピーブルズ氏は,2人の研究が7月ではなく同年8月のワシントン事件に基づいていたことを,読者に断っていなかったのだ!
著者である桑原恭男,玉置紀夫,百田克也の三氏については何も知らない.UFOの背後にいる「地球外知性体」(「不老不死の電算機の化け物」に成り果てている「可能性が高い」と著者らは見る[p.114])の動機をめぐる推理には同感しかねるけれど,そして,はるかに高度な人類(文明を出発させてからの時間が我々より長い,という意味で言っているのではない.生物として誕生した時点で我々よりはるかに恵まれているような人類を,私は空想しているのだ.運命とは不公平なものだからである)の能力を我々の科学水準に基づいて云々する,というUFO研究の伝統的な罠から自由になっていない点が惜しまれるけれど,本書は,おそらく世界UFO研究史上においても一つの記念碑と言えるのではないだろうか.ちなみに本書は,マクドナルド博士(故ジェイムズ・E.マクドナルド博士であろう)へ捧げられている.
沼川淳治
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