未確認飛行物体の科学的研究(コンドン報告)第3巻
>第6部第9章 機器によるUFOの探索   フレデリック・エーアU世


1.序

 UFO現象に関する無数にある既存の報告のほとんどは,情報源として不十分である.データがほとんどあるいはまったくないか,捏造された報告か,ありふれた物体を誤認した結果だからである.これらの報告のうちのほんの一部だけが,何がしかの推論を導けるだけの具体的な情報を与えてくれる.
 機器の助けを借りない観察者の五感はデータを科学的に記録するものとしては信頼できないので,UFO現象には機器を用いた観測が必要となる.さらに,観察者が有益な情報を提供する能力は訓練,観察時の心の状態,(現象が起こっているときやその後の)被暗示性に影響される.(UFO現象の観察には)正確さが要求されることから,角度,見かけのおよび実際の速度,距離,色,輝度といったデータを計測する機器が必要となる.
 適切な訓練を積み,客観的な心理状態にある,被暗示性の極めて低い観察者でも,機器の助けがないときには,科学的に有用な情報を得るのに苦労する.UFO現象は概して持続時間が短く,観察に慣れていない状況で起こり,距離,大きさ,速度について適切に推定する基準点がないため,このことは特によく当てはまる.
 機器が利用できるようになったとしても,報告を行う観察者や分析者はあらゆる科学的研究に内在するプロセス,つまり仮説を支持するか排除する証拠を求めようとする傾向が,研究者にあることを意識しなければならない.このような心理状態では,研究者は自ら計測したデータから,自分の予想にとって不適切なデータを無視する傾向にある.たとえば,航空管制官は,自分に関係のある航空機のレーダーエコーに集中する.気象学者は同じレーダースコープを見ても,雷雲,竜巻,前線の活動といった(航空管制官が扱っているものとは)まったく異なるデータに注意を向ける.軍の観測者は自然現象には注意をほとんど払わず,弾道運動する物体や軌道を周回する物体の接近を示している可能性のあるスコープ上のデータに注意を集中する.
 別の言葉で言えば,ほとんどすべての研究プロセスはその研究者にとっての“ノイズ”を最小にするように作られた内蔵“フィルタ”を通すことから始まる.しかし,ある者にとってのノイズが別の者にとってはデータであることはよくあることだ.陽子と相互作用するπ中間子の弾性散乱断面積を研究対象としている物理学者は,あらゆる非弾性事象を除去するのに役立つ評価基準を設定することから解析を始める.
 大気物理学者が大気光の研究に標準的に使用する機器,掃天フォトメータの情報を検討する際に,このフィルタリングプロセスが働いていることがわかった.この機器は空を扇状にスキャンし,結果を紙テープ上に線として記録する.黄道光と銀河は幅の広いコブ,恒星や惑星は鋭いスパイクとなって現れる.UFOの信号はスパイクとして現れると思われるが,UFOの運動により,連続してスキャンした空の別々の部分にスパイクが現れるかもしれない.  掃天フォトメータの操作者は,このような痕跡に気がつくだろうか.それとも,恒星や惑星の“ノイズ”と同様に無視するだろうか.彼の関心は,大気光を示す痕跡に集中しているので,UFOによるものと考えられる痕跡に気づかないことがありそうである.そして,実際にそうであった.
 UFO目撃時に記録された黄道光フォトメータの情報を本プロジェクトの調査員が調査したところ,恒星や惑星のものとは思われない四つのスパイクが連続したスキャン中に見つかった.データを分析した職員はそれらを無視していた.その物体の経路を幾何学的に再現した結果,太平洋上の軌道を通る弾道ミサイルを記録したものであることがわかった.詳細は,本章第8節“ハレアカラU”で述べる.
 ある機器の操作者が自分にとってノイズだと思っているものに気づかなかったとしても,同じ機器を異なる目的で使用する,すべての記録されたデータを入手できる操作者は,自分が関心をもっている特定の情報を探すことができる.掃天フォトメータの事例で示したように,機器を使用することで,科学的に分析できるUFOの記録が得られる.しかしながら,現存するすべての機器がUFO現象を効果的に探せる適切な分解能その他の特徴を持っているわけではない.
 私の意見としては,今後のUFO現象の研究は適切な装置によって記録された情報をもとにすべきである.この章では現存する機器と機器システムの,UFO探索に対する適合性についても述べ,検討する.また,UFO現象の研究に適切なデータを容易に得られるようにするには,どのような機器あるいは機器システムを考案したらよいかについても提案する.



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